旧ミニ
はてブロ書いてないなぁと思ってたら、ケータイの容量なくてアプリ消してたそうです。悲しき。
自分に全く関係ない話だし、Twitterに書いちゃいましたがなんとなくここでもまとめておきたかったので書きます。
mini
彼は昔からヨーロッパの車に憧れていたらしい。イギリス生まれのこの車は、彼だけでなく僕も凄い惹かれた。くりりとしたライト、小さなミラー、語りかけるようなエンジン音。
落ち着く。とにかく落ち着く。1回運転させてもらったが、本当にミニカーを転がしてるかのような感覚を今でも覚えている。
余計なものは何もない。タコメーターもない。いつもの感覚で走っている彼は、まるでミニと会話しているかのようだった。
昔から話すのが苦手な僕はただその会話を聞いているだけだった。でもそれでいい。いや、それがいい。雨がまた降り始めた。次第に夜が来る。
「相手」とは駅前のセブンイレブンで待ち合わせらしい。そう言えば初めて見たときも駅に迎えに来てもらった時だった。どう見ても20代にしか見えない相手は40前後と言っていたっけ。いろんな場所を見ながら、話は進んで行く。
決まったらしい。18万。折角なので第3者の僕が数える。18万。ちょうどだ。
18万で手に入るもの。
18万で手放すもの。
18万の価値。
18万の思い出。
いや、違う。
彼が決めたことに僕は口を出さない。だから黙って写真を撮る。黙って無限の価値を持つ思い出を撮る。
「カギを忘れた」と苦笑いする彼。
エンジンとドアとガソリン、3つの鍵が必要なミニ。ドアとガソリンの鍵を取りに家に戻る。相手は後ろを付いてくる。
再び乗った後、居酒屋の前で降りた。鍵を相手に渡す。少しの挨拶の後、ミニは旧中山道の闇に消えていった。
現金18万と、いくつかの写真が残った。